現在、慢性腎臓病用キャットフードとしてペットフード会社から様々な種類の療法食が販売されていますが、今回はそれらの療法食の主な特徴をご紹介したいと思います。
早ければ早いほうが良い
慢性腎臓病は、その病態によってステージⅠ~Ⅳに分類することができます。
ステージⅠ・・唯一の症状として、尿量と飲水量が増加する「多飲多尿」が見られます。血液検査では異常は見られません。
ステージⅡ・・血液検査に異常が見られるようになり、老廃物の一種であるクレアチニンや血中尿素窒素などが、正常範囲をわずかに超えます。症状としては「多飲多尿」のみが見られます。
ステージⅢ・・クレアチニンや尿素窒素がより重度に上昇するようになります。また、様々な毒素が尿から排泄されず体内に蓄積することによって、元気喪失や食欲不振、体重低下、嘔吐、下痢、口内炎、貧血といった様々な症状が見られます。
ステージⅣ・・著しく痩せてしまい、更には治りにくい食欲不振や嘔吐が持続します。また、毒素だけではなく水素イオンなどの酸性物質が排泄されずに体内に蓄積され、その結果、体液が酸性に傾いてしまう、「アシドーシス」という状態になり、昏睡してしまう可能性があります。
昔と違い、現在ではステージⅠから腎臓病用のキャットフードを用いた食事療法を始めることができれば、より腎臓病の進行を緩和できるといわれています。よって異常に気づくことができるように、日頃から愛猫の尿量と飲水量を把握しておくことが、大切です。
タンパク質控えめ、でもカロリーはしっかり
慢性腎臓病では、腎臓を休めてあげることも大切です。腎臓は機能の一つとしてタンパク質を分解してできた後に残る老廃物である、尿素窒素の排泄を担っています。従ってタンパク質を制限することによって、尿素窒素の量を減らし、腎臓の負担を軽くすることができます。猫では、フードのカロリーの19~20%をタンパク質が占めるように調整すれば良いといわれています。ただ、単にタンパク質を制限するだけでは、カロリーが減ってしまい、栄養状態が悪くなってしまいます。よって、制限したタンパク質の代わりに非タンパク質性エネルギーである炭水化物と脂肪によりカロリーを維持する必要があります。
味の好みに注意
食事療法を始める際には、その切り替え方も大切です。猫は食に関しては、かなり頑固なところがあり、例え空腹であっても嫌いなものは決して食べないという一面があります。本来は、疾患が判明し、獣医師から指示があればすぐにでもフードを療法食に切り替えることができるのが一番なのですが、猫の場合は、いきなり今までと違うフードに替えると受け付けてくれないときがあります。その場合は、今までのフードに少しだけ療法食を混ぜ、慣れてきたら療法食の割合を多くしていく方法がお薦めです。もしくは、猫は犬と比べて温かい食物を好む傾向にあるので、食べないときは電子レンジでほんのり温めてあげたり、お湯を加えてふやかしてあげることも有効です。
ナトリウムの量に注意
通常、腎臓は食事から取りすぎた余計なナトリウム(塩分)を体外へ排出する働きも行っています。しかし、慢性腎臓病では、腎機能が低下しているため十分な量のナトリウムを排出することができず、ナトリウムを過剰に摂取してしまうと体内に過剰に貯留され、結果として血圧が上昇してしまいます。だからといってナトリウムの摂取量を制限しすぎてしまうと、反対に脱水状態となってしまうため、慢性腎臓病ではナトリウムの摂取量に注意を払う必要があります。現在、慢性腎臓病の猫では一日あたりのナトリウムの推奨摂取量は乾物量ベースで、10~40mg/kgといわれています。
リンの量は控えめに
慢性腎臓病ではリンの排泄も低下してしまうため、リンを過剰に摂取すると甲状腺の近くにある上皮小体という臓器の機能が亢進する、続発性上皮小体機能亢進症という疾病が引き起こされてしまいます。すると、上皮小体から過剰なホルモンが分泌され、その結果骨から血液中へカルシウムが大量に吸収されてしまうことによって骨がもろくなったり、血液中の高濃度のカルシウムが腎臓を含む軟部組織に沈着してしまう石灰化という現象が引き起こされてしまいます。よって慢性腎臓病の猫ではリンの摂取量は乾物量あたり0.4~0.6%に抑えることが推奨されています。
飲水量も十分に
慢性腎臓病の対処療法としてよく皮下点滴が挙げられますが、これは尿を濃縮する機能が低下しているため、尿量が増えてしまうことによる脱水を防ぐためにも行われています。皮下点滴以外の方法で水分を補ってあげるためには、療法食のタイプをウェットにしてあげることも有効です。慢性腎臓病では、合併症として口内炎も発症しているときが多いため、固いドライよりもウェットの方が食べやすいという傾向もあります。また、最近では犬猫用の飲料水も販売されているため、愛猫が好む水を見つけてあげることも有効だと考えられます。
慢性腎臓病の療法食についてご理解いただけたでしょうか?早期発見早期治療のためにも普段から愛猫ちゃんのことをよく見てあげてくださいね。