人間の世界でも問題となっている肥満ですが、当然、動物の世界でも肥満は万病の元ということができます。肥満によって引き起こされる主な病気には糖尿病、高脂血症、高血圧、心臓病、脂肪肝、癌、運動器系疾患などがあり、どれも比較的、慢性的に見られ、かつ1度発症してしまうと長期間にわたって治療が必要とされる疾患です。今回は、あなたの愛猫が肥満になってしまった時にどのようなことに気をつけてフードを選ぶべきかお教えしたいと思います。
本当に肥満?
一般的に肥満とは、脂肪組織が過剰に蓄積した状態と定義することができますが、動物の体脂肪計が普及していない今日では、脂肪の量を測ることは難しいと思います。よって猫の場合、体重で肥満かどうかを判断することになりますが人間が性別や身長で理想体重が変わるように、猫もその種類や骨格によって理想体重は変わります。例えば、同じ猫でもシンガプーラの理想体重が2~4kgなのに比べ、ベンガルの理想体重は5~10kgと、倍以上の差があります。また、同じシャムでも足が太くてどっしりしている子と足が細くて華奢な子では当然理想とする体重が変わってくるということは想像しやすいと思います。更に、猫の場合、Mixの子も多いため、そもそも理想体重が存在しないということも十分にあり得ます。
そこで、肥満かどうかを判断するために基準とされるのがいわゆる「ボディコンディションスコア(BCS)」となります。これは猫の肥満度を眼で見て、手で触って判断することができるものであり、特別な道具を必要としないため家でも日常的に行いやすいので、現在推奨されています。詳細は、ネットなどで「ボディコンディションスコア」と検索すれば詳しい図表付きで知ることが出てくるため、ぜひ実際にやってみることをお勧めします。または、かかりつけの獣医師に聞くのも良いと思います。
実際に自分の愛猫が肥満なのかどうか、知ることが肥満対策への一歩ということができます。
肥満の原因は?
上記の方法などで、愛猫が肥満であると判断できたからすぐにダイエット開始!とするのは大変危険です。なぜならその肥満が、もしかしたら病気の症状の1つかもしれないからです。病気があってそれゆえに起こる肥満を「二次性肥満」と呼びます。これは主に、全く食事の量や種類など生活習慣を変えていないのに急に太り始めたり、食欲が落ちているのに体重は増えていたりなど矛盾した肥満であることが多く、自己判断で勝手にダイエットを始めてしまうと病気の悪化につながってしまいます。二次性肥満を引き起こす病気には、糖尿病やインスリノーマなどが存在します。よって、肥満だと判明したら、必ずかかりつけの獣医師に相談し、必要ならば血液検査などを受けることが重要となります。
ダイエットの計画は?
愛猫が、病気でもなく本当の意味で肥満だと判明したら、いよいよダイエットの開始です。ダイエットだからといって断食は決して行ってはいけません。これは猫の場合、急に食事を取らなくなると肝臓に過剰に脂肪が蓄積する肝リピドーシスという病気を発症してしまう可能性が非常に高いからです。また、短期間の減量も結果的に全身の栄養状態を悪化させてしまうため、NGです。基本的に1週間で体重の1~3%の減少を目指すようにしましょう。
ダイエットの進め方
犬の場合は、散歩に行く場合が多いため運動と食事を上手に組み合わせてダイエットを行うことが可能ですが、猫の場合、散歩を好む子は少ないため基本的には食事のみを利用してダイエットを行っていくことになります。
まず、今、与えているフードの種類を見直しましょう。たまに、もう成猫なのに子猫用の成長期用のフードを与えている方がいますが、これは非常に不適切な行為の1つです。一般的に成長期用のフードは高カロリーなものが多いためと、子猫と成猫では必要とする栄養素の割合が異なってくるため、肥満なだけではなく栄養状態も悪化させてしまう可能性があります。必ず猫のライフステージに合わせたフードを与えてください。
次に、おやつの量や種類を見直しましょう。少しの肥満ならば、おやつを一切、与えないだけでもかなりの改善が見られることがあります。しかし、おやつも愛猫との大事なコミュニケーションの1つだと捉えられている方も多いため、なかなかおやつの回数を0にすることは難しいのが現状です。その場合は、今与えているフードの数粒や数匙をおやつとして与えて、食事の時はその分、量を減らして与えてみることをお勧めします。これによってトータルの摂取カロリーを減らすことができ、かつおやつの時間もそのままなため、一石二鳥でダイエットを行うことができます。
ダイエット用キャットフードの選び方
かかりつけの獣医師と相談し、上記の方法ではなくダイエット用の療法食を始めることになった場合、気をつけなくてはいけないことは2点あります。
まず、愛猫の嗜好性も検討することです。上述したように、猫が急に食事を取らなくなると肝リピドーシスという病気を発症してしまうことがあり、これは特に肥満の猫になると可能性がより高くなるといわれています。よってどの場合もそうですが、急に1度にフードを替えるのではなく、少しずつ新しいフードの割合を増やしていくようにしましょう。
次に、ダイエット用療法食の成分に注意しましょう。基本的にダイエットフードは、食べる量は変わらなくても摂取カロリーを減らすことができるように食物繊維を添加していることが多いといえます。添加している食物繊維の量が適切ならば問題はないのですが、猫は犬と比べて肉食傾向が強いためあまりにも過剰な食物繊維を摂取してしまうと他の栄養素の消化が阻害されてしまったり、吐き戻しが起こってしまう可能性があります。よってダイエットフードを選ぶ際は、食物繊維添加を過剰に謳っているものではなく、低脂肪かどうかや良質なタンパク質を含んでいるかなどに着目することが今日では推奨されつつあります。