肝臓病用キャットフードの特徴

現在、肝臓病用キャットフードとしてペットフード会社から様々な種類の療法食が販売されていますが、今回はそれらの療法食の主な特徴を五点ご紹介したいと思います。

タンパク質の量を制限する+高い消化性のタンパク質を用いる

タンパク質は小腸から門脈を通過して肝臓に運ばれ、肝臓内で様々なアミノ酸に分解されます。そして、このアミノ酸を材料として血清タンパクやグロブリン、凝血因子などの生体に必要なタンパク質が再び肝臓内で合成されます。また、役割を終えたタンパク質は腸管や腎臓でアンモニアに変換されて肝臓に運ばれ、そこで無害な尿素に分解され、最終的に尿や便と共に排泄されます。
しかし、肝臓病では肝機能が低下しているためアンモニアを尿素に分解することが難しくなってしまい、その結果高アンモニア血症のリスクが高まってしまいます。よってタンパク質の量を制限する必要があり、猫では肝臓病罹患時のタンパク質の一日投与量は3.0~3.5g/kg/dayとされています。
一方、肝臓病の回復期には壊死した肝細胞の再生や傷ついた肝細胞の修復のために、消化性の高い良質なタンパク質を与える必要があります。

高い消化性の炭水化物を用いる

炭水化物に含まれている糖質は、それ以上分解されない単糖のグルコースなどにまで分解され、そのほとんどは小腸から門脈を通過して肝臓に運ばれます。その後、肝臓内にてグルコースがいくつも結合したグリコーゲンという物質に変換され、肝臓に貯蔵されます。貯蔵されたグリコーゲンは血糖値が下がると、再びグルコースに分解されて筋肉や脳に運ばれてエネルギーの産生に利用されます。
上述したように肝臓病時には、通常時と同じ量のタンパク質を摂取することができないため、エネルギーの多くを糖質から得る必要があります。また、肝臓内に貯蔵するグリコーゲンの量を増やすことによって肝臓の抵抗性を高めることができます。従って肝臓病時には摂取する炭水化物の量を制限してはならないと考えられており、かつ利用しやすいように消化性の高い炭水化物を用いることが推奨されています。
しかし、一度にたくさんの炭水化物を摂取してしまうと、弱っている肝臓内においてグリコーゲンへの変換が追いつかず、血中にグルコースが大量に存在したままのいわゆる高血糖という状態になってしまう可能性があります。従って、一度に大量のフードを与えるのではなく、数回に分けて少しずつ与える必要があります。

ビタミンKの欠乏に注意する

肝臓病時に、特に欠乏に気をつけなければいけないビタミンとしてビタミンKを挙げることができます。ビタミンKは脂溶性ビタミンであり、凝固因子の一つでもありますがその吸収には胆汁を必要とします。
肝臓病、特に胆道閉塞などの胆汁うっ帯性の病気の時には胆汁の流出が少ないために、ビタミンKの吸収が阻害されてしまい、その結果なかなか血が止まらないなどの症状が起こってしまう可能性があります。このような場合には適切な量のビタミンKを含んでいるフードを選択する必要があります。

脂肪の量に注意

食べ物に含まれる脂肪の多くは、化学的に安定した中性脂肪として存在しています。体内に入ると中性脂肪は十二指腸で胆汁により乳化され、さらに膵臓から分泌される消化酵素の働きで、モノグリセリドと脂肪酸、グリセロールなどに分解されます。
グリセロールはそのまま小腸から吸収されますが、モノグリセリドと脂肪酸は、腸内に分泌された胆汁酸によって、ミセルという非常に小さい分子に取り込まれ腸管から吸収されます。
肝臓病、特に胆道閉塞などの胆汁うっ帯性の病気の時には胆汁の流出が少ないために、ビタミンKと同様にモノグリセリドと脂肪酸の吸収も阻害されてしまうためフードに含まれている脂肪の量には注意する必要があります。

肝性脳症の予防として食物繊維を用いる

1.で記載したように、肝臓病では肝機能が低下しているためアンモニアを尿素に分解することが難しくなってしまい、アンモニアが体内に残存したままになってしまいます。また、アンモニア以外の有毒な物質も肝臓にて解毒されないまま残存してしまい、その結果、肝性脳症という症状が引き起こされる可能性があります。治療薬としてラクツロースという物質を用いてこれらの有毒物質の生成を抑制しますが、食物繊維にも同様の効果があります。食物繊維の中でも、可溶性繊維は腸管内のpHを産生にすることによってアンモニアの吸収を阻害し、不溶性繊維はアンモニアを捕らえて体外に排泄する効果があります。
よって肝性脳症の予防として食物繊維を含んでいるフードを選択する必要がある場合もあります。

  ご理解いただけたでしょうか?もちろん、これらの特徴はあくまで一部であり、フードによっては全く違う特徴を持っているものも存在しています。大事な猫ちゃんが肝臓病にならないためには、日々の食事管理や健康診断がなによりの予防方法だと思いますが、もし肝臓病に罹患してしまった場合は、お薬だけではなくフードを変えることによってより回復を早めることができるということを思い出していただければ幸いです。